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VOL23 : 青年期における臨床心理学的援助

総合福祉・心理臨床科学講座 講師 後藤 佳代子

1. はじめに
  青年期は、心も身体も子どもから大人へと移行する時期です。心は、児童期までの両親との依存関係から離脱し、一人の独立した「私」を作り上げていこうとします。身体は、第二次性徴が始まり、大人の身体へと成熟していきます。このように心も身体も変化する青年期は、心理的に混乱しやすいこと、孤独感を強く感じることなどが指摘されています。心理的混乱や孤独感から、スクールカウンセラーや、学生相談室、心療内科などを訪れ、カウンセリングを求める青年は少なくないでしょう。
 青年期のクライエントを担当するとき、カウンセラーは様々な視点からクライエントの心のありようを理解しようとし、臨床心理学的援助の方法を考えます。この「研究だより」では、「孤独感」に焦点を当てた臨床心理学的援助を紹介したいと思います。
  さて、落合は、青年期の孤独感を対他的次元(共感性の獲得)、対自的次元(個別性の自覚)の二次元構造とし、4類型に分類可能としました(Fig.1)。そして、これら4つの孤独感類型は、A型からB型、そしてC型、D型へと発達するとしています。  
Fig.1 孤独感類型(落合,1999)


2. クライエントの孤独感変化のための臨床心理学的援助について
  健康なパーソナリティーであり、現実適応はしているものの、様々な理由から、「誰とも共感できない」「自分を理解してくれる人はいない」と感じている青年、つまり、孤独感類型C型であるとアセスメントできる青年がカウンセリングを求めてくる場合があります。筆者が担当した2事例から、クライエントの孤独感がC型からD型へと変化する過程を、カウンセラーとクライエントとの関係性という視点から考察しました(Fig.2)。
(*「研究だより」では、事例の経過報告は省略します。)

@ 孤独感類型C型のクライエントをカウンセラーはD型の理解を持って、面接室に迎えました。クライエントは、D型へと変化する準備性が高い青年でした。

A クライエントの話し方、話す内容からカウンセラーはクライエントに拒否されたように感じ、カウンセラーも孤独感類型C型に陥ってしまいました。
Fig.2 孤独感類型の変化への臨床心理学的援助
B カウンセラーは孤独感類型D型の理解を持って、自分がなぜC型になったのかを考えました。カウンセラーは自分の逆転移によるものととらえ、クライエントのC型を理解しました。その結果、カウンセラーの孤独感類型C型はD型へと変化しました。

C カウンセラーはBでの理解をクライエントへ自己開示しました。

D クライエントはカウンセラーの理解や自己開示により、“理解・共感する他者”を内在化しました。その結果、クライエントの孤独感類型はC型からD型へと変化しました。


3. おわりに
  上述したような経過をたどり、カウンセリングが終結したのは、クライエントが健康なパーソナリティーを有していること、孤独感類型のD型へと変化する準備性が高かったことに負うところが大きいと考えています。今後の課題として、健康なパーソナリティーのクライエントとのカウンセリングを重ね、上記の図を精緻化していきたいと考えています。また、孤独感類型A型やB型の青年期のクライエントが孤独感類型D型になるための臨床心理的援助の方法を検討することも必要と考えています。

(2016.04.01)

引用・参考文献
落合良行:『孤独な心 淋しい孤独感から明るい孤独感へ』,サイエンス社,(1999)形成に向けて−』明石書店,2013.
後藤佳代子:「青年期後期における“孤独感類型”変化のための心理援助 −カウンセラーとクライエントとの関係性からの一考察−」,生活科学研究誌,Vol.3,pp173-183,(2004)

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