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VOL20 :猛暑日における水ミスト噴霧体験に対する熱的快適性評価

居住環境学講座 講師 ファーナム クレイグ

紹介
  日本の真夏日で水ミストを用いて、「クールスポット」を作成することが増えています。汗の蒸発による冷却効果と同様に、ミストを噴霧して、涼しい空間を作成できます。ミストの冷却能力はミストを作る高圧ポンプの消費電気量の200倍程度で、かなり省エネで冷却ができます。日本の様な湿気が多い気候では、ミストによる空気温度低下は約2〜4度しか生じない。しかしながら、温度低下が小さいと分かった一方で、ミストを体験する人による評価は意外に高いことが知られています。この理由を明らかにするために、ミスト噴霧に対する人間の生理的な反応を測定して、冷却効果の評価と比較する目的で実験を行いました。熱環境に対する「快適」とはどのような要素で構成されるのかを検討する必要があります。

実験装置
  高校生と家族のために開催された大阪市立大学のオープンキャンパスでミスト冷却体験と実験を行いました。ミストファンを建物や木によって部分的に遮蔽された屋外空間に設置し、ミストファンの方位を調整し、完全に遮蔽された空間にミストを噴霧しました。体験者は椅子またはベンチに座った状態です。
  この実験のミストシステムは高圧ノズルが付いている高速ファン(扇風機)を用いました。噴射量は意外と少なく300ml/分で、ファンを首振りにすれば、10~20人程度楽しめるクールスポットを作成でます。
写真1 ミストファンとクールスポットの空間 写真2 オープンキャンパスでの実験中

実験手順
  大阪市立大学で2013年8月10,11日に開催されたオープンキャンパスの参加者から体験者を募集しました。この日は2013年で最も暑い猛暑日でした。
  1. 年齢、性別、着衣量、などを聞いてから、ミストに入る前後に熱的快適性の3点「温冷感」、「快適感」、「濡れ感」の評価を得ました。
    温冷感:9段評価、非常に寒い (-4), かなり寒い,寒い,やや寒い、どちらでもない(0)、やや暑い、暑い、かなり暑い、非常に暑い (+4)
    快適感:7段評価、かなり不快 (-3), 不快, やや不快, どちらでもない(0), やや快適, 快適, かなり快適 (+3)
    濡れ感:7段評価、かなり乾いている (-3), 乾いている, やや乾いている, どちらでもない(0), やや濡れている, 濡れている, かなり濡れている(+3)
  2. 体験者はミストに入る前後に、非接触IR温度計で頬と腕の皮膚温度を測定し、サーモカメラを用いて、前腕と顔のIRイメージを撮影しました。実験しながら、測定器の使い方を訪問者に教えました。
  3. ミスト体感後の3つ評価「温冷感」、「快適感」、「濡れ感」を記入してもらいました。
  通常、皮膚の濡れ感は温感による不快性とよく相関します。すなわち、蒸し暑い日、汗だらけの時は気持ちよくありません。「濡れ感の質的評価」:体験者は濡れ感があった場合、「今の濡れ感は不快か、気持ちいいか、どちらでもないですか。」と聞きました。
表1: ミスト体験前後の皮膚温度 図1:赤外線写真(左)ミスト入る前(右)ミスト出た後
図2: 左:温冷感(横軸)対快適感(縦軸)のプロット、丸の大きさは人数に比例する。右:濡れ感(横軸)対快適感(縦軸)
図3: ミスト前後の濡れ感の質的評価(快適pleasant,不快unpleasant,どっちでもないneither)

快適性評価検査の結果
  全141ケースの平均値は下記の表に示します。ミスト前後の前腕の平均皮膚温度低下は 1.1℃、顔の平均温度低下は1.0℃でした。ミスト入る前の平均温冷感は +2.7 (かなり暑い)であり、ミスト後で -1.41 (やや寒い)に低下し、濡れ感は上昇しました。ミスト前の濡れ感は75%「不快」として評価されました。これは普通の汗による不快感と考えられます。しかしながら、ミスト後の濡れ感、すなわちミストによる濡れ感は75%が「快適」と評価しました。

まとめ
  真夏日に水ミストを用いて、「クールスポット」を作成しました。ミストを体験した141人では、熱的快適性がかなりよくなりました。約1度の皮膚温度低下がありました。濡れ感が高くなりましたが、快適と評価されました。クールスポットの最適化を行うため、これからの研究ではミストの付着量を測定して、水の蒸発モデルを開発する予定です。快適な空間の作成だけではなく、熱中病などの対策として使用する可能性も検討します。


(2014.6.2)


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