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VOL19 :臨床に携わる管理栄養士の視野 〜透析予防管理チーム構築を通して〜

食・健康科学講座 准教授 安井 洋子

【はじめに】
  臨床に携わる管理栄養士は、日々患者の栄養管理について考え行動しています。なかでも、多職種により構成されるチーム医療での栄養管理は様々な好成績をもたらし、必須となってきています。よりチームの力を生かすには其々が各職種の役割を熟知し連携のとり易いチームを構築することも重要であり、栄養管理はチームの結成時から始まっています。

【背 景】
  糖尿病患者の透析導入は年間16,971人(2011,12月現在)とされ、主要原疾患の44.2%を糖尿病性腎症が占め、慢性糸球体腎炎20.4%、腎硬化症11.7%の順となっています。

【目 的】
  糖尿病性腎症による透析移行への予防を図るため、透析予防チーム結成し実施後の状況を検証しました。

【方 法】
  阪大病院では、糖尿病センターがないため、医師・看護師・管理栄養士の独立した3つの部門が協力してチームをつくり、2012年6月よりミーティングを開始し、9月に診療開始しました。 このチームの特徴は、主治医を専任としました。
 まず、管理栄養士でこのチーム医療に参加するためにミーティングを行い、次に、各部門間で、5W1Hの考え方に基づき話し合いました。そして、このチーム医療をより円滑にかつ確実に実施するため、患者さんの窓口への配慮として事務部の医事課、システム構築専門の医療情報をチームメンバーとし、より具体的な診療の流れを検討しました。
■ミーティング内容の5W1H(表1)について
 独立した3つの部門であるため、<いつ> <どこで>について、また、患者のモチベーションを高めるため、<方法>について重点的に話し合いました
 管理栄養士、医師、看護師、医事・医療情報の役割を決定すると共に、それぞれがチームとして介入できるよう、管理栄養士の立場から、他部門への内容にも提案・要求をしました。
表1. 5W1Hに基づくチームの役割
■検討会での決定事項
 誰が、患者に対してどのような介入をし、スタッフ間で、どのような情報を共有すればよいのかについて、即ち、各職種の役割を明確にした一覧表を作成(表2)しました。
表2.職種別役割表
■患者介入(症例)
【症 例】 75歳 女性
【現 病 歴】 2型糖尿病、高血圧、脂質異常症にて内分泌・代謝内科通院中。
【糖尿病細小血管症】 網膜症 SDR、腎症2期、神経障害あり。
【身体所見】 身長 147.7 cm、 体重 63.5 kg、 BMI 29.1 kg/u、 血圧 140/60 mmHg
【血液検査】 HbA1c 7.1 %、GA 24.7 %、血清Cr 1.02 mg/dl、 eGFR 40.6 ml/min/1.73u
【指 導 歴】
 40年前に近医にて栄養指導、当院では教育入院の際に栄養指導を受けていましたが、間食がやめられないこと、塩分制限や体重減量に対する認識が乏しいことが問題となっていました。
■5W1Hを基にしたチームでの介入
 まず、医師からの情報を基に管理栄養士が介入。管理栄養士の指導終了後、指導終了の通知と患者への行動目標を看護師へ電話にて連絡。看護師の指導終了後、指導終了の通知と患者へのコメントを医師へ電話にて連絡。医師が統括して、患者の動機付けを行いました。
【症例への介入結果について】
・チームで取り組む支援目標;糖尿病食を基本とし、厳格な血糖コントロールに努め、降圧治療、たんぱく質の過剰摂取を改善。
・指導栄養量;熱量 1360 kcal、たんぱく質 65 g、脂質 40 g、食塩 6 g
・問題点を抽出し、管理栄養士は減塩と間食の減量、看護師は運動の時間修正と体重減量について指導。それを受け、医師が患者へ動機付けを行いました。
・その結果、指導2ヶ月後の患者の血圧・体重が減少しました。

【結 果】
1. 透析予防チームの結成により各部門との敷居が低くなり、意思の疎通がはかりやすくなっていました。
2. 個々の糖尿病患者への認識を共有することができるようになりました。
3. 具体的には食事・運動を含めた生活上の問題点を発見した場合に、その情報を看護師、医師と迅速に共有でき、該当糖尿病患者の問題対応を指導当日に行えるようになりました。

【まとめ】
  透析予防チーム結成には、医師、管理栄養士、看護師の協力が必須であり、システム構築のための医療情報、関係職員・患者への配慮は医事課の協力も必要です。
  チーム医療を実施するにはミーティングを何度も繰り返すため、結成 段階からチーム医療が始まっていることを認識すると同時に、各部門との敷居が低くなり、患者情報をより正確に共有することができるようになりました
 以上のことから、透析予防チームは、糖尿病患者を、より総合的に診療できる体制であることがわかりました。
★チームでの栄養管理は、患者を中心としたチームの目的意識を明確にすることで、自身の目的・方法も明確になり、他職種への配慮もでき、“チームのやる気”を生むことが可能となります。結果とまとめは医師の意見をまとめたものです。透析予防チーム結成をとおして、栄養管理には栄養のみならずチーム構築(チームのやる気)への視野も必要と考えます。


(2014.4.9)


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