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ご 挨 拶


大阪市立大学
大学院生活科学研究科長
生活科学部長
永村 一雄

生活科学を考える

 みなさんが、生活科学という言葉に、はじめて接したのはいつでしょう。高校生や新入生のみなさんなら、食品に興味があったとか、住宅をデザインしてみたいとか、親族の介護がキッカケで福祉に関心をもったとか、身近にあった課題に直面したときだったかもしれませんね。わたしたちの生活科学部は、3つの学科から構成されています。学科ごとに特色を有しながら、生活科学というひとつの枠の中で学部・研究科を構成している理由は、なんでしょう。
  すこしだけ歴史を振り返ると、わたしたちの学部は、1949 年に発足した家政学部が源になっています。つまり、生活科学の前身は家政学でした。現在でも家政学会という学術団体が存在しますので、学術分野でいうところの家政学は存在しますが、わたしたちの先達たちは、この家政学という殻から脱皮して、あたらしく生活科学という分野を創設しました。それは、1975 年のことです。日本ではじめて、生活科学という学術領域を名のった学部が誕生したのです。日本に新制大学がうまれたころは、社会の基盤そのものを構築することがもっとも重要なことだと認識されていました。この時代は、個々人の生活はさておいて、社会全体の底上げを謀ることが大事でした。その後、よく知られる高度経済成長期を経て社会のインフラが整うと、今度は視点が個々人の生活の質の向上に移行していきました。生活という概念は、より広いカテゴリを意味する言葉、社会の範疇に内在します。経済を豊かにするという合言葉は、先の基盤整備の頃の象徴です。時代とともに、社会基盤は整備され、多くの人々が最低限度の社会生活を送ることができるようになったいま、社会のなかでも、とくに個々人の暮らし、生活こそが重要になってきた、という訳です。
  個々人の考えはさまざまです。ですから、豊かさの捉え方もいろいろです。単にお金があれば豊かかというと、それほど単純でもなさそうです。お金よりも自由な時間がほしい、そう願う人たちもでてきます。こうした社会の大きな変化は、高度に経済発展した国々で顕著に観察される現象です。そこでは、社会のしわよせが、生活という個人の領域にまで及んでくることがしばしば問題になっています。現在の日本でも、たとえば少子高齢社会ゆえの課題が、いたるところで見え隠れするようになってきました。社会の中で生活がおきざりにされつつある状況を、論理的に分析・解明し、合理的に処方していく手法が、必要とされているようです。現代こそ、生活を科学する必然が生じている、そう言い代えてもよいでしょう。先達たちが唱えた生活科学こそ、いまの時代に必要な視点であるように思えます。
  生活科学は、ほかの学部のように馴染みない言葉かもしれません。しかし、時代の要請に応えた内容をこんなに包摂する領域名もないでしょう。みなさん、自信をもって生活を科学し、その成果を社会に生かしてみようではありませんか。

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