トップページ博士号取得者一覧神部 智司

[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■02 神部 智司(カンベ サトシ)
・特別養護老人ホーム入居者の満足度評価に関する研究
 −施設サービスに対する領域別満足度と総合的満足度の関連に着目して−
学位名: 博 士(学術) 論文審査委員: 主査 教授 白澤 政和
副査 教授 畠中 宗一
副査 教授 山縣 文治
副査 准教授 岡田 進一
取得年月日: 平成23年3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 近年社会福祉サービスが措置から契約に移行する中で、利用者がサービスを自己選択することを可能になり、自己選択に資する評価が重要な研究課題となってきた。本申請論文は特別養護老人ホームに焦点をあて、入居者の満足度の評価に関する研究であるが、その特徴は入居者の満足度を「領域別満足度」と「総合的満足度」という2つの視点で捉え、それぞれの満足度の構造や尺度を明らかにすると同時に、「領域別満足度」と「総合的満足度」の関連性を明らかにしたことにある。
 序章を含めた6章構成となっており、序章では本研究の背景と目的を示し、第1章では文献研究をもとに「領域別満足度」と「総合的満足度」の関係に着目した実証研究の重要性を指摘している。第2章では,特別養護老人ホームの入居者の施設サービスに対する「領域別満足度」の因子構造について、第3章では,特養入居者の施設サービスに対する「総合的満足度」の因子構造について、検討している。第4章では,「領域別満足度」と「総合的満足度」の回帰関係モデルを理論的に構築し,「領域別満足度」の各下位領域が「総合的満足度」に与える影響の大きさを明らかにしている。最終章では,入居者の施設サービス満足度の観点から、良質な施設サービス実践に向けての提言を行なっている。以上のように、明確な理論枠組みをもとに研究を進めていることが評価できる。
 本研究は、特別養護老人ホーム入居者のうち,質問内容を理解できる判断能力があり,第三者的立場にある面接調査員との会話による回答が可能であることが施設職員によって判断され,かつ調査への協力依頼に同意が得られた者120名に対して面接調査によるものである。具体的に調査結果を示す第2章から第4章において、明らかになった主たる知見は以下の通りである。
 第2章では,入居者の施設サービスに対する「領域別満足度」を『施設職員の態度』『施設環境の快適さ』『食事に対する配慮』『入浴に対する配慮』の4つの下位領域で構成する評価尺度を作成し、尺度の内部一貫性を高めることを目的として、22項目について探索的因子分析を行い,「領域別満足度」は『施設職員の態度』『施設環境の快適さ』『食事に対する配慮』の3因子構造が妥当であるとした。この結果を受けて、『施設職員の態度』『施設環境の快適さ』『食事に対する配慮』の3因子構造の構成概念妥当性を確認するために構造方程式モデリングを用いた確認的因子分析を行ない、モデルの適合度は統計学的に十分許容できる水準にあることを示した。
 第3章では,「総合的満足度」を先行研究で用いられてきた『施設全体に対する満足度』に『入居後の肯定的な変化に対する満足度』を新たに組み入れた2つの下位尺度で構成するとし、探索的因子分析を行い,『入居後の肯定的な変化に対する満足度』および『施設全体に対する満足度』の2因子構造が妥当であると判断している。この結果を受けて2因子構造の構成概念妥当性を確認するために構造方程式モデリングを用いた確認的因子分析を行なっているが,モデルの適合度は統計学的に許容可能な水準にあったことを示した。
 第4章では,入居者の施設サービスに対する「領域別満足度」の各下位領域が「総合的満足度」に与える影響の大きさを明らかにすることを目的にし、「領域別満足度」の各下位領域を独立変数,「総合的満足度」を従属変数とし,入居者の基本属性を調整変数とする多重指標モデルを構築し,構造方程式モデリングを用いてデータに対するモデルの適合度と各変数間の関連について検討している.その結果,『施設職員の態度』や『施設環境の快適さ』領域から「総合的満足度」へのパス係数は有意であるが、『食事に対する配慮』領域から「総合的満足度」へのパス係数は有意ではなく、「総合的満足度」に対する「領域別満足度」の各下位領域および調整変数の説明率は93.3%と極めて高い結果を示した。
 終章では、以上のような分析結果をもとに、入居者のサービス満足度評価に着目した援助実践についての提言を行っている。「総合的満足度」を向上させるための援助実践としては,施設職員は入居者との間に良好な関係を形成することが極めて重要であり,そのためには入居者に対して傾聴的かつ共感的態度で接すること,入居者のプライバシーを保護すること,そして入居者から信頼されることの重要性を十分に認識して援助実践を行うことを提言している.また、施設経営者には入居者が施設で快適に暮らせるための環境整備に対して十分に配慮することも提言している.
 特別養護老人ホームでの入居者の満足度に関する評価尺度や満足度の構造を明らかにできたことが高く評価でき、本申請論文は博士(学術)に値する。


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