トップページ博士号取得者一覧佐藤 由美

[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■01 佐藤 由美(サトウ ユミ)
・住宅と福祉の連携による高齢者居住政策の形成と展開
 −地域の居住要求をもとに−
学位名: 博 士(学術) 論文審査委員: 主査 教授 多治見 左近
副査 教授 白澤 政和
副査 教授 藤田 忍
副査 准教授 三浦 研
取得年月日: 平成22年 9月30日

 
・論文審査の結果の要旨
 居住生活におけるサービスや環境が必要との認識はかねてからあったが、高齢者居住において、福祉やサービスとの連携が必須条件であると具体的に考えられるようになったのは1990年代半ばである。しかいその連携が円滑に進んだとは言い難い。本研究は、具体的な施策現場における連携という、これまで明確には取り組まれていなかった独自の観点から高齢者居住の現状を実証的に整理し、課題を明らかにしようとした探索的研究であると位置づけられる。
 本研究は大きく、高齢者居住施策とこれに関係する行政組織を論じた第I部・第II部、高齢者居住施策の運用状況を論究した第III部、地域に居住する高齢者の居住要求や意向を解明した第IV部と結論(第V部)からなる。第T部・第U部で高齢者住宅の関する公的施策の経緯と全体像と構造を概観し、第V部で連携施策のうちの主なものについて具体的運用状況を考察しさらに第W部によって、高齢者居住施策が具体的な地域でどの程度有効性をもつかと今日的課題とを検証しようとしている。
 第I部1章では、1980年代からの高齢者に関する住宅政策と福祉政策との変遷を検討し、政策立案主体と施策実施主体とが分離する方向にあること、高齢者居住政策において日常生活圏域の視点が重視されるに至っていることを系統的に示している。
 第II部2章・3章では、自治体における高齢者居住施策の取り組みを実証的に検討し、住宅部局と福祉部局との組織的性格に基本的な相違があって連携への姿勢に差があらわれること、その連携多様性の要因として協議機会の多寡、充実度や、現状や施策に対する認識の共有度があることが推測され、さらに、連携が進めば他の施策への効果もあることが、本研究による新たな知見として得られている。
 第III部は具体的施策の運用状況の考察である。4章では高齢者要求の変化、高度化とサービス提供方式における地域ケアシステムの成立などが、シルバーハウジング・プロジェクトの変化や今後の方向付けに大きな影響を与えていると指摘している。このような知見は従来の知見をさらに深めたものと評価できる。5章では、高齢者住宅の改造・改修相談における住宅・福祉連携について、ケアマネージャーの登場により行政の役割が変化確認するとともに、ケアマネージャーを中心とする住宅改造・改修の支援体制形成への移行の必要性と課題を提示している。
 第W部は地域の高齢者アンケートと地元サービス提供者のインタビューによってその居住実態・要求と課題を把握し、地域高齢者の居住要求を、住宅・福祉施策やその連携というこれまでなかった観点から検証している。
 第X部(13章)結論では研究結果による課題として、連携のための協議と情報・課題の共有の深化、地域からのボトムアップ型政策化プロセスの確立、総合的・横断的居住政策、の3段階の展開があげている。
 本研究は、住宅と福祉との連携に焦点をあてて実証的に問題を探求しており、得られた知見は施策運用の課題を明示するとともに、今後の高齢者居住施策に大きく寄与するものである。以上の諸点により、審査委員会は本論文が博士(学術)の授与に値するものと認めた。


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