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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■14 樋口 雅俊(ヒグチ マサトシ)
・健常日本人の身体機能多項目計測に基づく関節トルク特性に関する研究
 −人間中心設計への応用を考慮した性差・世代差の検討−
学位名: 博 士(学術) 論文審査委員: 主査 教授 岡田 明
副査 教授 宮野 道雄
副査 教授 森 一彦
取得年月日: 平成22年 3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 この論文は,身体特性データの多項目計測と,その応用を考慮した性差・世代差等の一連の分析をまとめたものである.使いやすく安全なモノづくりを実現するためには,それを扱う人間の心身データに基づく設計を行う必要がある.しかし,そうしたデータが乏しい状態が続いていたため,国のプロジェクトとして設計向け人間データの計測とそのデータベースの整備が進められた.さらに操作力設計に資する関節トルクを中心とした多項目計測が日本人老若男女約1000名を対象として実施され,その一環としての研究が本論文を構成している.論文は序論(第1章),本論(2〜7章),結論(第8章)から成る.第1章では,人間特性データの整備状況,製品設計における人間特性データの活用実態について概観し,それらを背景とする本研究の位置づけを明らかにしている.第2章では,次章以降の最大関節トルク計測に共通する方法をまとめた.第3章では,本計測に先立ち上肢関節の最大関節トルク計測に採用する計測方式の問題点について検討を行い,より精度や安全性の高い手法を決定した.第4章は本論文の中心をなす章であり,前章で検討した計測手法に基づく男女約1000名(20〜80歳代)の四肢6関節の最大関節トルクを測定し,その特性について主に性差・世代差に関する比較を行った.トルク値の世代による変化をまとめているが,上肢関節トルクにおいては若年女性の値が中年女性よりも有意に低いことなど日常生活習慣の影響をうかがわせる現象も認めており,今後議論となるデータを提示した.また関節角度変化に伴うトルク値の変化は関節毎にユニークな特性を示し,用いる関節トルク値はその発揮角度により考慮されるべきこと,さらに世代毎にその特性が変わることを明らかにしており,関節トルクデータの利用方法に重要な示唆を与えている.第5章では,高齢者の最大関節トルクに焦点をあて,現在あるいは過去に運動履歴のある被験者は,運動履歴がない被験者よりも全ての関節においてトルク値が上回ることを裏付けた.また上肢関節では女性よりも男性の方が低下の度合いが大きく,下肢関節では男女ともに足関節底屈力の低下率が大きいことを明らかにしたが,その要因については今後の検討課題である.第6章では,同時計測された動作パフォーマンスとの比較に基づき検討し,日常生活習慣の影響を受けやすい項目を挙げている.第7章では,上記で求めたトルクデータを用いることによる上肢関節トルク推定モデルを提案しており,今後の精度の向上が期待される.第8章(結論)では,本論で得られた各章の結果を総括した.これまで少数の計測項目と被験者により散発的に実施されてきた従来の研究事例に比べ,本研究における多項目同時計測に基づく多角的な分析の学術的意義は大きい.特に運動履歴や生活習慣の調査と掛け合わせた世代差や性差の検討は斬新であり,よりきめの細かい人間中心設計,特に操作力を伴う生活機器の設計に光を当てるものである.よって,審査委員会は本論文を博士(学術)の学位を授与するに値するものと認めた.


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