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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■10 與那嶺 司(ヨナミネ ツカサ)
・生活施設における知的障害のある人の自己決定とその関連要因に関する研究
 −担当支援職員に対する調査をもとに−
学位名: 博 士(学術) 論文審査委員: 主査 教授 白澤 政和
副査 教授 堀   智晴
副査 教授 要田 洋江
取得年月日: 平成22年 3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文は、生活施設での知的障害のある人についての調査をもとに、彼らの自己決定の構造と特徴、自己決定と個人要因・環境要因の関係を明示し、知的障害のある人の自己決定支援方法について提言している。
 第1章では、知的障害のある人の自己決定の実態、自己決定に影響を及ぼす要因、自己決定支援方法について、現時点での研究の到達点を示した。
 第2章からは、生活施設の支援職員から収集した知的障害のある人の自己決定に関する調査の分析であるが、知的障害のある人の自己決定の領域を、「日常生活活動における自己決定」、「友人・知人の選択および共有時間に関する自己決定」、「医療的処置に関する自己決定」、「個別支援計画作成における自己決定」、「友人・知人との外出および招待に関する自己決定」の5つに構造化した。その中で、「医療的処置に関する自己決定」が押さえられていることを示した。
 第3章は、知的障害のある人の自己決定能力を、「目標設定能力」、「コミュニケーション能力」、「課題遂行能力」、「意思決定能力」の4能力に構造化し、5領域それぞれについて、これら4能力、障害程度区分、基本属性との関連をみると、5領域とも、「目標設定能力」を高めることができれば、自己決定を高めることができることを示した。一方、「コミュニケーション能力」と「意思決定能力」は、「日常生活活動における自己決定」および「友人・知人の選択および共有時間に関する自己決定」と関連しており、これらの自己決定は、比較的基礎的な自己決定能力を高めることにより可能となっていることを示した。「個別支援計画作成における自己決定」も「目標設定能力」のみしか関連しておらず、個別支援計画そのものの画一性が、「コミュニケーション能力」や「意思決定能力」を十分に活用していない可能性があることを示した。なお、「課題遂行能力」は、知的障害のある人の自己決定に直接関係する能力ではない可能性があることを明らかにした。
 第4章は、知的障害のある人の生活施設の支援環境を、「新たな活動につながる支援」、「本人の意思の尊重」、「役割モデルの存在」、「地域とのつながり」、「スタッフ教育・訓練」の5因子で構造化されることを示した。5つの領域で支援環境との関連性を分析した結果、「本人の意思の尊重」は、すべての領域に関連し、知的障害のある本人の意見や主張を尊重することが自己決定の促進につながる基本であることを明らかにした。「スタッフ教育・訓練」は、どの自己決定領域にも関連していなかったが、他の支援環境因子に影響を与え、それらの因子が知的障害のある人の自己決定に影響を与えている可能性が高いことを示唆した。
 第5章では、知的障害のある人の自己決定に影響を与える環境要因の1つである施設規模について検討し、ほとんどの自己決定は施設規模が大きくなるほど抑えられる従来からの仮説を支持したが、「友人・知人の選択および共有時間に関する自己決定」は、逆に施設規模が大きいほど自己決定が促進されることが明らかになった。ここから、理念的には生活施設が小規模なほど、施設内外の多様な人々と関わる機会が多くなるはずであるが、生活施設は地域統合がなされたとは言いがたいため、こうした結果が導き出されたと推測した。
 終章では、第1に、環境要因が知的障害のある人の自己決定に影響を及ぼすことから、自己決定を促進していくためには、知的障害のある人に対して、「個別的ニーズへの積極的対応」と「地域における多様な人々や経験と関わることのできる機会の提供」の重要性を指摘している。さらに、多少の危険があっても「リスクを冒す尊厳」を受け入れた支援を行う必要があることと、一方で、高度な判断が必要な医療的処置に関する自己決定領域においては、本人を可能な限り「巻き込んだ」決定に心がけつつも、ピアサポーターを活用した積極的な介入を提示した。第2は、個人要因としての自己決定能力に着目した自己決定支援として、本人の希望や好みに焦点をあてた支援でもって、「目標設定能力の向上による自己決定支援」をしていくことの必要性を指摘した。
 本論文は、以上のような様々な知見を明らかにしており、博士(学術)の学位に値するものであると認定した。


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