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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■09 竹本 与志人(タケモト ヨシヒト)
・血液透析患者における精神的健康低下の発生モデルに関する研究
 −家族機能に対する認知的評価と血液透析患者の精神的健康および主介護者の療養継続困難感との関連に着目して−
学位名: 博 士(生活科学) 論文審査委員: 主査 教授 白澤 政和
副査 教授 畠中 宗一
副査 教授 山縣 文治
副査 教授 石川 久展
  (関西学院大学人間福祉学部)
取得年月日: 平成22年 3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文は、血液透析患者の精神的健康と患者・主介護者の家族機能認知と主介護者の療養継続困難感との関連性をもとに、帰納的に構築した血液透析患者の精神的健康低下の発生モデルを実証的に検証している。研究の調査データは、A県腎臓病患者連絡協議会の透析患者と主介護者を対象にし、その中で同居家族があり、通院している血液透析患者とその主介護者であり、ペアデータをマッチングした研究枠組みになっている。各章で設定したモデルの評価は、構造方程式モデリングを用いて分析している。なお、精神的健康の測定尺度はGHQ12項目版を、家族認知機能尺度はFAD60項目から21項目を選定したものを活用し、療養負担感はCBSの短縮版を援用している。
 論文の構成は、9章構成になっており、第1章では、血液透析患者の精神的健康に関する研究の動向、研究で用いた概念の定義ならびに尺度選定の方法、本調査の方法および解析方法等について整理した。
 第2章では、透析患者の精神的健康に関する要因の文献を精査し、今日までの研究の到達点と今後の研究課題を明らかにした。
 第3章では、透析患者が家族をどのように認知しているかに着目し、家族機能に対する認知構造を明らかにした。その結果、認知構造は「家族の凝集性」、「家族の適応力」、「家族のコミュニケーション」の3因子で構成され、これら3因子は一次元性を有していることを示した。
 第4章では、透析患者の家族機能認知と精神的健康との関連性を検討している。統制変数に用いた性別、年齢、透析歴、合併症数、就労の有無、経済困難感のうち、透析患者の精神的健康は合併症数や経済困難感と有意な関連を示したが、それらよりも「家族の凝集性」が強く関連していることを明らかにした。
 第5章では、透析患者の精神的健康と主介護者の療養継続困難感との関連を検討しているが、透析患者の精神的健康は患者自身の属性や透析関連の潜在的ストレッサーを制御しても、主介護者の療養継続困難感と関連していることを実証した。
 第6章では、透析患者の主介護者の療養継続困難感に着目し、療養継続困難感に影響を及ぼす療養負担感との関連性について検討し、主介護者の療養負担感の下位尺度である「否定的感情の認知」が療養継続困難感に有意に関連していることを明示した。
 第7章では、透析患者の主介護者における家族機能認知と療養負担感、療養継続困難感との関連性について検討し、家族機能認知の内の「家族の凝集性」が療養負担感の「否定的感情」を介して療養継続困難感に関連していることを示した。
 第8章では、第2〜7章の結果をふまえ、透析患者の精神的健康と家族要因との関連性を評価する仮説モデルを帰納的に構築し、構造方程式モデリングを用いて実証的に検討した。その結果、仮説モデルは統計学的な許容水準を満たしており、患者の精神的健康には患者自身の家族の凝集性と主介護者の療養継続困難感が影響しており、透析患者の精神的健康に対する説明率は34.9%であった。本結果より、臨床においてソーシャルワーカーには透析患者と主介護者の「家族の凝集性」に対する認知的評価、主介護者の「否定的感情の認知」および療養継続困難感に着目したアセスメントと支援が必要であることを示唆した。
 第9章では、結論として、透析患者の精神的健康、家族機能認知、主介護者の療養継続困難感に着目し、透析医療におけるソーシャルワーカーのアセスメントならびに支援方法について提言を行った。
 本論文は、血液透析患者の精神的健康の家族機能認知や主介護者の療育継続困難感との関連で多くの新たな知見を示し、さらに血液透析患者へのアセスメントや支援方法について多く示唆するものであり、博士(生活科学)の学位に値するものであると認定した。


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