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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■07 徐 聖輝(ジョ セイキ)
・Application and mechanisms of the anticancer effects of 1’-acetoxychavicol acetate in tumor cells
(ガン細胞における1’-acetoxychavicol acetateの抗ガン作用機序とその応用について)
学位名: 博 士(学術) 論文審査委員: 主査 教授  小西 洋太郎
副査 教授  曽根 良昭
副査 教授  西川 禎一
副査 准教授 小島 明子
取得年月日: 平成22年 3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 タイにおける消化器系ガンの発生率は、他のアジアや欧米諸国に比べて半数以下であることから、申請者は、タイの食生活のなかで伝統料理によく使用されているナンキョウ(タイショウガ;Alpinia galanga)に着目した。本論文では、エールリッヒ腹水ガン細胞(以下、ガン細胞)を用いてナンキョウの根茎から単離された1’-acetoxychavicol acetate (ACA)による抗ガン作用機序を解明し、その機序をもとにしたACAの応用について発展させている。
 まず、第1章では、ACAによるガン細胞のアポトーシス細胞死の誘導メカニズムとして、細胞内の酸化還元を調節するグルタチオン (GSH) 量の低下作用について調べた結果、ACAはGSHの産生経路を阻害することによって細胞内GSHの供給量を低下させることを見出している。ACAによるガン細胞の細胞死の誘導にGSHの減少が関与することを初めて見出したものである。
 第2章では、ACAのどのような構造が抗ガン作用に関与するのかを調べるために、ACAおよびその類似体9種類を合成し検討した。その結果、細胞生存率の低下と細胞内GSH量およびGR活性の低下との間には、強い相関関係が認められることを見出した。また、これらの低下には、ACA構造内の4位のacetoxyl基および2’ と3’ 間の二重結合の存在が必要であることを明らかにした。抗ガン作用に必要な構造の解明は、今後の抗ガン剤の新規開発にも応用できる貴重な知見である。
 第3章 では、ACAによるガン細胞の細胞増殖効果について、光学異性体である(S)-ACAまたは(R)-ACAを用いて検討した。その結果、(S)-ACAは細胞周期をG1期で停止させ、 (R)-ACAは細胞周期をG2期で停止させることを明らかにした。このことは、ACAは天然型のS体のみならず、光学異性体であるR体でも抗ガン作用を有するが、その作用メカニズムは異なることを明らかにしたものであり、他の機能性成分に関するこのような報告は少なく、その知見の有意性は評価できる。
 次に、第4章ではACAの抗ガン作用メカニズムを活かしたACAの応用について発展させている。ACAと重篤な副作用を引き起こすことが問題となっている抗ガン剤のシスプラチンを併用することによる抗ガン作用の相乗効果について検討し、正常細胞には毒性を示すことのない低濃度のシスプラチンは、ACAと併用することによってガン細胞死を誘導した。この結果は、ACAのさらなる応用の可能性を示唆したものであり、大変興味ある知見である。
 以上のことより、本研究は食品由来の機能性成分の構造と機能との関係を明らかにし、その作用メカニズムならびに応用を言及したものであり、食品の機能性を研究するための指針となりうる非常に価値のある論文と認められる。
 よって、審査委員会は、本論文は博士(学術)の学位を授与するに値するものと認めた。


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