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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■05 上西園 武良(カミニシゾノ タケヨシ)
・感覚要求性能を満たす設計値導出のための物理変換モデルの構築に関する研究
 −生活機器の開発効率向上のための設計手法の提案−
学位名: 博 士( 学 術 ) 論文審査委員: 主査 教授 岡田 明
副査 教授 宮野 道雄
副査 教授 森  一彦
取得年月日: 平成21年 12月 28日

 
・論文審査の結果の要旨
 この研究は人間工学の中の主要なテーマのひとつである人間中心設計の手法とその具体的成果を扱ったものである。その主な対象である生活機器の設計に際し、官能値で示された目標性能をいかに設計値に変換するかが大きな課題である。すなわち、快適性など感覚に基づく要求性能に対応した設計値は試作品が出来て初めて評価が可能になるため、そこで不具合があれば設計に差し戻し、開発工程上大きな損失を受ける。そこで設計の上流段階での評価がある程度可能になれば、コストや時間を大幅に短縮し設計を効率的に遂行できる。こうした設計現場での課題が研究の発端に繋がっている。

 本論文の序論として、第1章では研究の背景・目的を述べ、第2章では関連する既往研究例を紹介し、本研究テーマで取り上げる手法が確立されていないことを明らかにした。そこで、まず着目したのが外部刺激に対するヒトの反応プロセスである。設計された機器はヒトに外部刺激となる物理量を与え、それが感覚器と神経経路を介して中枢に伝達され官能値に変換される。従って、このプロセスを官能値→物理量→設計値と逆に辿ることにより、官能値を目標の設計値に変換することが本論文で提案する手法の一部である。ここでは間に物理量を介することにより従来の官能検査とは異なる汎用性を持たせた手法として、この論文の新しい点のひとつとなっている。

 こうした仮説を実践し、その有効性を示したものが、第3章と第4章の「刺激反応プロセスと機器の物理モデルとの融合」と題する2つの研究である。第3章は上記の方法論を枕の寝返り性を高めるために応用した。その最適な設計値を導くため、頭部の回転トルクが官能値と強く相関することを導き出し、頭部を枕に載せることによる沈み込み状態からの回転に必要なトルクとの関係で数量化することにより設計値導出モデルを構築し、その有効性を検証している。その継続研究である第4章では、洗浄便座の洗浄強さ感の設計値への応用が取り上げられている。洗浄流量を変化させた時の官能評価から噴流の衝突力が外部刺激として強い相関のあることを求め、さらにその物理量が流量・噴出口の面積・洗浄位置の3つの変量で決定されることを導き、設計値へ変換することを可能にした。対象は異なるものの、いずれの研究においても上記の提案プロセスを実践し仮説の有効性を示したことから、今後同種の製品開発にも適用可能になると思われる。

 第5章では、これらの研究にて有効性が確認できた設計手法をより一般化するための定式化を行い、手法の実用化を図っている。第6章は本論文の結論として、一連の研究で得られた成果と今後の課題をまとめている。以上のように、本論文では従来未確立であった、官能値で示される目標性能を設計値に変換するための手法の構築を行い、複数の事例を通じてその有効性を示した。これにより、これまでトライ&エラーや設計者の経験により決められてきた設計値をより客観的普遍的に導出し、それをデータとして蓄積することでより広く活用することを可能にした。またこれまで手薄であった人間中心設計の研究領域に新たな礎を築いてくれた学術的な功績も大きい。

 よって、審査委員会は本論文を博士(学術)の学位を授与するに値するものと認めた。


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