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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■01 井上 照美(イノウエ テルミ)
・知的障害者入所更生施設における地域移行を支援する施設職員の実践活動に関する研究
学位名: 博 士( 学 術 ) 論文審査委員: 主査 教授 白澤 政和
副査 教授 堀 智晴
副査 教授 畠中 宗一
取得年月日: 平成21年 9月 30日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文は、知的障害者入所更生施設における地域移行を支援する施設職員の実践活動に関する調査をもとに、地域移行を進めていく要件を明らかにするものである。文献レビューにより、更生施設の設立時から地域移行が実態化してくるまでの歴史的な経過を示し、施設職員の実践活動および地域移行に関する先行研究を整理し、地域移行を推進していく研究の必要性を指摘した。

 本研究の基礎をなす調査は、西日本全域の495更生施設で地域移行の支援計画に携わる職員1名に対する自記式郵送調査によるものであり、調査結果として、地域移行を支援する施設職員の実践活動は、「家族との調整機能」「評価・見直し機能」「体験支援」「自己選択の支援」の4因子構造でもって地域移行を推進していく意識をもっていることを示した。さらに、施設の「地域移行実績」は、「家族との調整機能」「評価・見直し機能」「体験支援」の3領域および「知的障害者ケアマネジメント」が関連していることを示した。一方、「自己選択の支援」は負の関連が示され、地域移行は知的障害者の自己選択のもとで進められているわけではないことも明らかにした。

 地域移行を支援する施設職員の実践活動である「家族との調整機能」「評価・見直し機能」「体験支援」「自己選択の支援」それぞれについて、地域移行支援体制や地域のサポート資源との関連性をみると、全ての実践活動に「地域移行志向の職場環境」と「地域交流支援」が強い関連を示し、「体験支援」では、「グループホーム」と「ホームヘルプ」活用の有無が有意な関連を示した。また、「知的障害者ケアマネジメント実施」がいずれの領域とも関連が示されなかった。このことから、必ずしもケアマネジメント実践が知的障害者の自己選択のもと、家族調整、モニタリング、体験支援等といった内容を含んだ深い水準で実施されていない現状を浮き彫りにした。

 最後に、地域移行に関する実践内容と提言に関する施設職員の自由記述を分析し、施設職員が捉える地域移行を支援する実践活動の取り組みは多様であるが、地域移行を進めていくうえでの課題として、地域の社会資源不足、家族の理解・協力を得ることの困難さを指摘した。

 以上から、知的障害者の地域移行を推進していくためには、以下のこと等を指摘している点が評価できる。
(1) 地域移行を志向する立場を明確に表明した職場環境づくりを進めていくこと。
(2) 日頃から地域社会とのつながりを進めていき、「グループホーム」や「ホームへルプ」といった地域のサポート資源を有効に活用していくこと。
(3) 「家族との調整機能」「評価・見直し機能」「自己選択の支援」「体験支援」を推進していくこと。ただし、現状では、利用者の「自己選択の支援」が十分に行われていない状況にあること。
(4) 知的障害者ケアマネジメントを促進していくことが重要であるが、これについては、単に知的障害者のニーズと資源を調整することに留まらず、知的障害者の意向を中心に家族との調整や体験支援を含めた継続的な支援を行うこと。
 知的障害者の地域移行を推進していく上での政策的・実践的な新たな知見を提示しており、審査委員会は、本論文が博士(学術)の学位を授与するに値するものと認めた。


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