トップページ博士号取得者一覧> 黄 雪丹

[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■04 黄 雪丹(コウ セッタン)
・Mechanism of the growth inhibitory effects of Zizyphus jujube and green tea extracts in human hepatoma cells (なつめ抽出物と緑茶抽出物のヒト肝ガン細胞増殖抑制作用とその作用 メカニズムについて)
学位名: 博 士( 学 術 ) 論文審査委員: 主査 教授 湯浅 勲
副査 教授 小西 洋太郎
副査 教授 山本 由喜子
副査 教授 小島 明子
取得年月日: 平成21年 3月 24日

 
・論文審査の結果の要旨
 肝ガンは世界的にその発生率および死亡率が増加している。しかしながら、その治療は非常に難しく、有効な化学療法はいまだない。本研究ではなつめ抽出物の肝ガン予防と治療への応用の可能性を検討するために、ヒト肝ガン細胞(HepG2細胞)を用いて、なつめ抽出物のガン細胞増殖抑制作用とそのメカニズムについて研究している。まず第1章では、なつめ抽出物中にヒト肝ガン細胞の増殖抑制効果を有する成分が含まれることを確認した後、なつめ抽出物を各種の有機溶媒で分画し、その中でも、クロロホルム抽出画分に最も強いガン細胞増殖抑制効果が認められることを明らかにした。さらに、クロロホルム抽出画分は、ガン細胞に対して、アポトーシス細胞死の誘導と細胞増殖抑制の両方に作用することを明らかにした。なつめ抽出物の抗ガン作用メカニズムに関する報告は本論文が初めてである。また中国おいては、なつめを単独摂取するよりも緑茶と一緒に摂取する習慣があることから、第2章ではなつめ抽出物のクロロホルム抽出画分と緑茶抽出物との組み合わせによるヒト肝ガン細胞増殖抑制作用におよぼす影響について検討している。 その結果、なつめ抽出物と緑茶抽出物との組み合わせによってガン細胞の細胞周期を相乗的にG1期で停止させることを見出している。さらに、その相乗的効果のメカニズムとして、なつめ抽出物を単独添加した場合に認められたp27タンパク質-Rbタンパク質の経路とは異なり、もう一つの経路であるp53タンパク質とその下流に存在するp21タンパク質などの細胞周期調節因子を介する経路によりCDK2/サイクリンE複合体の活性を抑制し、それに続き、Rbタンパク質を低リン酸化状態に維持することによって細胞周期をG1期で停止させるという興味深い結果を得ている。これらの結果は、中国において日常的に摂取されているなつめと緑茶の組み合わせ摂取の有効性について、初めて科学的根拠を示したものであり、高く評価できる。次に、第3章では、なつめ抽出物のクロロホルム抽出画分と緑茶抽出物の組み合わせによるガン細胞増殖抑制作用に対する相乗効果のメカニズムについてさらに詳細に検討している。ガン細胞の増殖因子であるAPRIL (a proliferation-inducing ligand) の発現におよぼす両抽出物の関与について調べたところ、両抽出物を組み合わせた場合、その発現が顕著に抑制されること、さらに、APRILの発現が抑制された結果、細胞周期の抑制的調節因子であるp53タンパク質およびその下流のp21タンパク質の経路を介して細胞周期をG1期で停止させることを明らかにした。以上の結果から、なつめ抽出物によるヒト肝ガン細胞の増殖抑制効果を有する成分は、緑茶抽出物と組み合わせることによって、より強力な相乗的効果を発揮することを明らかにした。また、2009年末に出版される”Anticancer Mechanism and Drugs: Chemistry and molecular mechanism”の著者から、本研究を紹介したい旨の知らせが寄せられているように、世界的にも注目されている。以上述べたように、本論文は、なつめの肝ガンの予防効果についての科学的根拠および今後のヒトへの応用に対する基礎的知見を示した論文であり、非常に高く評価できる。

 よって、本論文は、博士(学術)の学位を授与するに値するものと認めた。


このページTOPへ

back number