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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■08 金 保叔(キム ボスク)
・Rheological and related properties of polysaccharides and the application in food and health
 (多糖類のレオロジー及び関連特性と食・健康における応用)
学位名: 博 士( 学 術 ) 論文審査委員: 主査 教授 曽根 良昭
副査 教授 山本 由喜子
副査 教授 小西 洋太郎
取得年月日: 平成20年3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 高齢化社会の進行の中で高齢者の加齢に伴って生ずる食に係る健康問題、特に高齢者が水や牛乳のような低粘度の液体を飲むと液体が気管に入り誤嚥性肺炎を起こす誤嚥問題に対してそれを防ぐために食品に適当な粘度(とろみ)を賦与する食材として多糖類の利用が注目されている。本論文では1種類の多糖類ではつくることのできないレオロジー特性や新しい食感を創出するため、異種の多糖類を混合した系のレオロジー研究を行い、さらに食物繊維多糖類の生理機能の検討を行っている。

 第1章では多糖類と食品製造・健康との関係、多糖類の化学的性質、物性、研究の目的について文献調査を基に的確に述べている。

 第2章では本研究に用いた主な測定技法について正確に述べている。

 第3章ではキサンタンガムの高分子・高濃度液を加熱、冷却した際に得られる溶液のレオロジー及びAFM(Atomic Force Microscopy)像を観察し、この過程でコイル−へリックス転移により複雑な絡み合い構造が形成されることを明らかにしている。このことは添加多糖類を加熱処理する食品加工の工程で添加多糖類分子の集合をもたらす可能性があることを示しており、食品プロセス科学の観点から評価される。

 第4章ではキサンタンガムとキシログルカンの混合系について、そのレオロジー特性を検討している。その結果、この混合系における相乗効果の要因は、キサンタンガム側鎖のピルビン酸とキシログルカン分子の相互作用によるものであることを明らかにした。このような異種の多糖類の混合によるレオロジー特性への相乗効果の報告は少なく、またその要因まで解明した例も少ない。このことから本章の研究結果は食品プロセス科学分野への貢献が大きいとして高く評価される。

 第5章ではキシログルカンとキサンタンガムの混合によるレオロジー特性への相乗効果に対する水素イオン濃度(pH)と添加塩濃度の影響を検討して、多糖類の混合系を食品加工に利用する場合、食品の性状を考慮する必要があることを明らかにしており、食品プロセス科学分野の成果として評価される。

 第6章では食物繊維多糖による分離大豆タンパク質(SPI)の酵素分解阻害作用をキシログルカン、SPI、タンパク質分解酵素を含むパンクレアチンとの混合系につきレオロジー特性を測定することにより検討して、キシログルカンがパンクレアチンによるSPI分解を阻害することを明らかにしており評価される。第7章では各章のまとめを述べ、最後の第8章ではこの研究により得られた結果に基づき多糖類の新たなテクスチャーモディファイヤーや機能性食品素材としての可能性を論じている。

 以上、本論文は異種の多糖類を混合した系が1種類の多糖類ではつくることのできないレオロジー特性や新しい食感を創出することが可能であり、新たなテクスチャーモディファイヤーとして食品の加工に応用できることを明らかにしている。さらに、これまで利用されてきた食物繊維多糖類であるキシログルカンの新たな生理活性をみいだしており、生活科学、食・健康科学分野での優れた成果をあげていると全編を通して評価できるものとなっている。以上のことから,本審査委員会は本論文が博士(学術)の学位に値するものと認定した。


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