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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■06 乗鞍 敏夫(ノリクラ トシオ)
・Food constituents and their mechanistic activity in the prevention of liver disorders
 (肝疾患を予防する食品成分の検索とその作用機構について)
学位名: 博 士( 生活科学 ) 論文審査委員: 主査 教授 湯浅 勲
副査 教授 山本 由喜子
副査 教授 羽生 大記
取得年月日: 平成20年3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文では、疾病予防の観点からの研究がいまだ行われていない肝疾患、特に肝炎および肝ガンに着目し、それらを予防する食品成分の探索法の確立および探索の結果から効果の認められた有効成分についての作用メカニズムを解明している。

 まず第1章では、薬物によるin vitro肝細胞障害モデルを作成し、本モデルを用いて薬物による肝細胞障害に対して抑制効果を有する食品成分のスクリーニングを行った。食品成分として、31種類の食用植物の乾燥粉末から得られた50%エタノール抽出物を用いて調べた結果、アロエ抽出物に最も強い効果のあることを見出している。さらに、作成されたモデルを用いてアロエの作用機序についても検討したところ、アロエ抽出物は薬物によって引き起こされる肝細胞内の主要な抗酸化物質であるグルタチオン量の減少を防ぐことによって肝細胞障害を抑制することを明らかにしている。

 次に第2章では、アルコールによる肝障害の予防について検討するためのアルコール性肝細胞障害モデルを作成し、本モデルを用いてアルコールによる肝細胞障害に対して抑制効果を有する食品成分のスクリーニングを行った。10数種類の食品成分についてアルコール性肝細胞障害抑制効果について探索したところ、g-アミノ酪酸が強い抑制効果を有することを見出している。さらに、作用機序について検討した結果、g-アミノ酪酸はアルコールによって誘導される肝細胞内ポリアミン含量の低下を抑制することによって肝細胞の恒常性を維持し、アルコールによる肝細胞障害を抑制することを見出している。

 第1章および第2章で得られた結果より、薬剤性の肝障害においては、細胞内活性酸素種の産生量が亢進することによって生じる過酸化の防御に重要な役割を果たしているグルタチオン量の維持が、薬剤性肝細胞障害の予防に重要であること、また、アルコール性肝細胞障害においては、細胞増殖および細胞内における様々な機能の維持のために重要な役割を果たしているポリアミン量の維持が、その予防に重要であることを明らかにしている。これらの知見は今後の研究の指針となり、他研究者の研究に多いに役立つものと思われる。

 第3章では種々の食品成分のうち、主としてBlumea Balsamiferaに注目している。Blumea Balsamiferaは和名「高砂菊」と称し、東南アジアなどにおいてお茶の代用品あるいは薬草として用いられている。本章ではいまだ明らかにされていないBlumea Balsamifera抽出物の抗ガン作用とそのメカニズムについてin vitroガン細胞増殖モデルを用いて検討している。その結果、Blumea Balsamifera抽出物は正常細胞として用いたラット肝細胞に対して全く毒性を示すことなしにラットおよびヒト肝ガン細胞の増殖を特異的に抑制することを見出している。さらに、この抽出物によるガン細胞増殖抑制メカニズムにA proliferation-inducing ligand (APRIL) タンパクの発現が関与することも明らかにした。なお、食品成分によるAPRILタンパクの発現抑制作用については本論文が初めての報告である。

 以上述べたように、本論文は、肝細胞障害および肝ガンを予防する食品成分の探索法の確立と研究指針を提唱したものであり、生活習慣病、特に肝疾患における食による予防の今後の体系化に大いに寄与するものであり高く評価できる。

  よって、本論文は、博士(生活科学)の学位を授与するに値するものと認めた。


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