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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■05 深田 智恵子(フカダ チエコ)
・近世京都の鴨東地域における居住地の展開と町家に関する史的研究
学位名: 博 士( 学 術 ) 論文審査委員: 主査 教授 谷  直樹
副査 教授 多治見 左近
副査 教授 藤田  忍
取得年月日: 平成20年3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 伝統的な都市型住居である町家の成立と変容の過程は、住居史研究の重要な課題である。先行研究によると、京都の町家は、17世紀末頃に近世住居として確立し、18世紀半ばには平面形式の定形化が進んだとされる。しかし、史料の制約もあって、17世紀から18世紀にかけての変遷については、不明な点が多い。そこで本論文は、京都東山の建仁寺文書を用いて、18世紀における建仁寺門前の新地開発と、そこに建設された町家の変容過程を解明したものである。

 京都の町家は17世紀末の元禄頃に、生産体制、建築技術、形態的な意味において近世的な成立を見たとされる。本論文が明らかにしたように、18世紀初頭までの建仁寺門前の町家は、中土間形式や生活空間を共有する平面構成で、中世末期の奈良のものとも共通性があり、初期の町家の形態を伝えたものと推定できる。この平面形式は、18世紀初期以降の新築町家では確認できないことから、18世紀初頭に近世町家の成立時期をおく説を補強する、新たな知見を提供している。

 18世紀の京都では、洛中から鴨川を越えて鴨東地区に居住地が拡大し、建仁寺門前でも新地開発が盛んに行われた。当時の建仁寺門前における新地開発の目的、開発主体、問題解決の手法など、本論文で紹介された歴史的事実は興味深い内容を含んでおり、現在のまちづくりにも示唆を与えるものである。

 同時に、18世紀の前期から中期にかけて新地に建設された多数の町家を分析することによって、その変容過程を具体的に検証し、居住空間の独立、2階の居室化、座敷空間の導入など、新築町家の特長を抽出している。さらに、京都の町家の標準的な平面形態である通土間型の普及には、戸建と長屋建で半世紀の時間差があり、その背景には座敷の確保という住要求が類推できることなど、町家の階層差を考える上で興味深い指摘をしている。

 このように、京都の町家は、18世紀を通して居住空間の変容が進んできたことを具体的に論じ、18世紀の初期と後期にそれぞれ画期が認められたことを示したことは、本論文の大きな成果である。ただ、史料の制約があるとはいえ、本論文はすべて建仁寺門前にとどまっており、より広い視野からの検証が望まれる。さらに鴨東の他の寺社門前の開発動向や町家の実態、洛中の町家との比較検討までは及んでおらず、今後に課題を残している。とはいえ、本論文は、18世紀を通して町家の平面や構造などの空間構成を具体的に取り上げ、その変容過程を丹念に跡づけた労作であり、居住環境学分野はもちろんのこと、建築史学や歴史学の研究にも大きく寄与するものと高く評価できる。

  以上の審査結果から、本論文は、博士(学術)の学位を授与されるに値するものと認められる。


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