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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■04 尾立 純子(オダチ ジュンコ)
・現代の食生活におけるミネラル摂取状況とその問題に関する研究
 ―生活習慣病の予防に対する亜鉛の重要性―
学位名: 博 士( 生活科学 ) 論文審査委員: 主査 教授 湯浅 勲
副査 教授 山本 由喜子
副査 教授 西川 禎一
取得年月日: 平成20年3月24日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文ではミネラルの中でも特に亜鉛に着目し、実際の食生活における摂取の現状および問題点を把握し、亜鉛の摂取方法や亜鉛欠乏と耐糖能障害との関連性を明らかにすることによって生活習慣病の一次予防の原点となる食事からの亜鉛摂取の重要性について検討している。

 本論文は、7章から構成されている。第I章では現代の食生活におけるミネラルの摂取状況とその問題点を挙げている。第II章では青年層の食生活全般の問題点を調べるために、調理済み食品の利用背景と健康状態についてのアンケートによる実態調査を行っている。調理済み食品の利用の原因と頻度、あるいはコンビニエンスストアやファーストフード店の利用の頻度と健康状態の関連性について検討している。その結果、今後のさらなる簡便志向とともにこれらの利用頻度が増加することが推測されるが、健康的な食生活を営むために栄養素のバランスについて、より一層の考慮の必要性を示唆している。そこで第III章では摂取した食事中のミネラル量を把握するために、食品成分表からの計算量と乾式灰化法による実測値について比較検討している。その結果、多くのミネラルは調理損耗などによって計算値の方が高値を示したが、亜鉛に関しては実測値と計算値との間に乖離が少ないことを見出している。このことは、亜鉛の摂取量については食品分析表からの計算値から算定できることを示している。次に、第IV章では亜鉛の適切な摂取方法について検討している。亜鉛の摂取間隔を毎日、一日おきまたは二日おきの摂取とし、ヒトを対象とした場合と動物実験によって調べた結果、亜鉛の総摂取量が同じであれば、その摂取間隔の違いによる影響は認められないことを見出している。このことは、日常生活での亜鉛の摂取方法について指導する上での重要な知見である。第V章では亜鉛欠乏と耐糖能障害との関連性について検討するために動物実験をおこなっている。その結果、低亜鉛食を摂取した場合、血糖値が有意に上昇することを見出している。一方、ヒトを対象とした研究として、糖尿病患者に食事調査を実施し、亜鉛の摂取量を計算したところ、推奨量よりも低値を示したことを明らかにしている。さらに、糖尿病患者における血液性状と味覚感度の相関を検討したところ、血清亜鉛量が低いほど味覚感度、特に甘味の識別能が悪いことが明らかとなった。このことは、糖尿病患者への食事指導に役立てることができる新しい知見であり高く評価できる。第VI章では、公衆栄養学的な観点から、調査対象者の亜鉛の栄養状態を把握する方法として毛髪分析の応用を検討している。その結果、毛髪検査は高齢者の栄養状態を非侵襲的に推察できることを見出している。第VII章では総括として、現在の食生活において、食事から摂取するミネラルとして亜鉛摂取量が低下していることを明らかにし、それを補う方法としての摂取方法について検討したところ、毎日摂取しなくても、充分量摂取していれば問題のないことを示した。さらに、糖尿病患者における血清亜鉛値および味覚感度の低下の原因の1つに食事からの亜鉛摂取量が少ないことから、食事からの亜鉛摂取の重要性について総括している。

 以上の結果から、本論文は現代の食生活における亜鉛の摂取状況とその問題点について幅広く研究を行うことにより、食事指導を行う上での新しい知見を見出している。

  よって、本論文は博士(生活科学)の学位を授与するに値するものと認めた。


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