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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■08 楊 開宇(ヨウ カイウ)
・社会主義市場経済体制における中国の医療保険制度の変容と発展
―経済体制改革をめぐる公的医療保険政策の歴史的展開と改革のための論点整理と方向―
学位名: 学術 論文審査委員: 主査 教授 坂口 正之
副査 教授 白澤 政和
副査 教授 畠中 宗一
取得年月日: 平成19年3月23日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文は、つぎの諸点で独創的な意義を有するものと評価できる。

 第1に、わが国において未だ中国の公的医療保険制度に関する研究が少ないなかで、先駆的な研究に属するものであるという点である。中国の公的年金制度については、最近の日本にも紹介され、注目されつつあるが、公的医療保険精度については、紹介の事例も少ない。近年、社会保障の国際比較が行われ、北欧型、西欧型、米国型などの類型化のほかに、南欧型や東アジア型も注目されているが、本論文のような中国の医療保険制度の正確な実態を分析する本格的な研究は、社会保障の類型化の研究の進捗に役立つものと考えられる。

 第2に、本論文は、単なる最近の制度紹介ではなく、中国の公的医療保険制度を経済体制の変化のなかで、その政策意図や役割の変化を対応させ、それに基づいて制度の変遷を後追い、その特質や特徴を明確にする分析手法をとる研究成果であると評価できる。

 第3に、中国の基本医療保険制度を、統一された全国的な国家保険ではなく、基本的には地域保険として捉え、地域間の比較を行っていることも評価できる点である。中国では、一般に統計的なデータが入手困難であるが、2市ながら上海市と青島市を取り上げ、医療費と所得水準に関するデータを得て、地域格差の内実を明らかにしたことは先駆的な研究であるといえる。

 第4に、公的医療保険の実態を多面的に把握しようと努め、産業間格差、地域格差、高齢者医療問題、医療供給体制、衛生対策などの切り口で分析し、現状および問題点を詳細に明らかにしたことも新たな研究成果であると評価できる。

 以上のようにみると、本論文は改革のための具体的な政策提言に至ってはいないが、それは今後に残された課題としても、本論文の研究成果を損なうものではない。

 よって、本論文は、研究課題の先駆性、論文の構成、分析対象の多様性および分析結果の妥当性などの面から判断して独創性を有し、博士(学術)の学位を授与されるに値するものと認められる。


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