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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■07 今村 顕(イマムラ サトシ)
・アンカーポイントからみた高齢者施設の空間のわかりやすさ評価に関する研究
学位名: 学術 論文審査委員: 主査 教授 森 一彦
副査 教授 宮野 道雄
副査 教授 岡田 明
副査 教授 足立 啓
取得年月日: 平成19年3月23日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文は、従来極めて困難であった「空間の分かりやすさ評価」の基礎研究として、経路探索シミュレーションシステム「WASS(Wayfinding Active Simulation System)」を独自開発し、それを活用した繰り返し経路探索実験によって、高齢者施設におけるアンカーポイント(手がかりの要)を特定することで空間のわかりやすさを評価するひとつの方法を解明した独創的研究である。

 特に、WASSによって高齢者に多く見られる症状として老眼(ぼやけ視)と白内障(霧視)を再現し、繰り返し経路探索実験を行うことで、視覚障害のある場合のアンカーポイントの特性を検討し、ぼやけ視は霧視に比べて、ぼやけが輪郭に直接的に作用するため視力低下が顕著で、ぼやけによってネームプレートなどの設備的要素や絵画などの備品的要素の確認が困難となること、霧視はぼやけ視に比べて、白濁が弱い視界では輪郭が保持されるため視力の低下が小さくなるが、白濁が強くなると色が失われ、設備的要素や備品的要素だけでなく、区間や地点の区別がしづらくなり、手がかり自体の抽出も困難となることなど、視覚障害の種類による相違を初めて明らかにした点は特筆に値する。

 さらにアンカーポイントとなる有効な因子として、アルコーブ等の形態のコントラストや、窓のある廊下などの輝度のコントラスト、廊下と扉などの色のコントラストなど、各種のコントラスが重要であることを示し、この結果から、視覚障害の種類・有無に関わらずアンカーポイントが形成されるには、分岐点や目的室における形態と輝度によるコントラストが重要であること、空間の見通しの良い地点は、空間全体の情報を得やすいためアンカーポイントになりやすく、特に分岐点や目的室など要所が見通せることが空間の分かりやすさを向上させることなど、空間の分かりやすさ向上のための計画指針を示したことは大きな成果であるといえる。

 以上のように、本研究では実験装置として経路探索シミュレーションシステム・WASSを独自開発し、それによる繰り返し経路探索実験に基づくアンカーポイントから空間のわかりやすさを評価する方法を明らかにした。

 この手法は、空間の分かりやすさに関する客観指標の検討、視覚障害の種類や程度に応じた空間のわかりやすさ評価法の検討、さらには駅や公共施設および都市空間など広範な施設計画への応用など、多面的な発展性を有している。


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