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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■06 大久保 克子(オオクボ カツコ)
・富裕化の中の生活問題
―消費生活様式のパラダイム転換に向けて―
学位名: 学術 論文審査委員: 主査 教授 坂口 正之
副査 教授 白澤 政和
副査 教授 山縣 文治
取得年月日: 平成19年3月23日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文は20数編の副論文からなり、本論文の著者のこれまでの研究の集大成であり、以下の点で意義があると評価できる。

 第1に、本論文は、第2次大戦後わが国がどのように日本型消費生活様式を構築し維持してきたか、そこからどのような生活問題が生じているかを分析する歴史的研究を含み、その大きな流れはバブル経済破綻後の今日でも継続していると捉え、本論文で明確にされた消費生活様式の大枠から派生する問題点に対して、その解決のための前提条件について大きな構想を示そうとするものである、ということである。

 第2に、その意味で、本論文では、第1章から終章まで構成する枠組みとその論理展開について注目する必要がある、ということである。本論文を構成する個々の副論文は、本論文の課題に応じて再構成して組み入れられているが、この論理展開は、日本型消費生活様式が過剰消費・過剰労働を強制し、一般国民の生活は豊かになったようであるが、なお生活困窮者と新しい不安定雇用層の問題は解消されず、それと同時に資源・環境問題(マクロ面)と家庭経済・家族関係の問題(ミクロ面)が同時に出現し、したがって、その解決策は経済成長に求めるのではなく、その再分配に求め、最終的に社会保障の拡充にたどり着く、という道筋になる。このような本論文全体の構想と論理展開には説得性があるものと認められる。

 第3に、社会保障の経済効果を最新の産業連関表を用いて検証したことも評価できる点である。この産業連関表は、従来は公共事業の妥当性を明らかにするために用いられることが多かったが、社会保障、医療・保健、介護、教育について、生産誘発効果、粗付加価値誘発効果、雇用誘発効果を算出して、その経済効果の大きさを確認した点は新たな研究成果であり、評価できる。

 第4に、本論文では、社会保障の拡充を、1つにはマクロ的視点からの資源・環境問題、2つにはミクロ的視点からの家庭経済・家族関係における生活問題、さらに3つには所得不足に起因する貧困問題、これら3つの問題を同時に解決するものとして、新しい役割を展望している。これまでは、社会保障は3番目の貧困対策に位置づけられることが多く、社会保障をコストとして捉えられていたが、むしろ経済効果のあるものとして位置づけており、ここに本論文の特徴と独創性が存在するといえる。

 以上のことから、本論文は、課題の設定、論文の構成、論理展開の妥当性、調査資料の適合性、文献渉猟の多様性などから総合して判断すると、独創的で優秀な研究成果を有しており、よって博士(学術)の学位を授与されるに値するものと認められる。


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