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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■05 蘇 珍伊(ソ チンイ)
・特別養護老人ホームにおける介護職員の仕事での有能感に関する研究
学位名: 学術 論文審査委員: 主査 教授 白澤 政和
副査 教授 畠中 宗一
副査 教授 山縣 文治
取得年月日: 平成19年3月23日

 
・論文審査の結果の要旨
 本学位申請論文は、特別養護老人ホームの介護職員を対象にして、仕事での有能感(conpitency)に関する実証分析でもって、職員の介護業務を意欲的に遂行するための支援策について検討する研究である。介護職員は今後増大が期待されているが、一方で現在外国人介護職員が現実化しようとしている過程にあり、専門性を備えた優秀な福祉人材を確保・育成していくことを目的とする研究の意義はきわめて大きい。

 論文は8章構成であり、第1章は、介護職員の仕事の現状について文献をもとに言及し、第2章は、内発的動機に基づく有能感に関する文献レビューをもとに、介護職員の仕事での有能感についての枠組みを提案している。第3章では、本論文の調査と研究の方法について概説し、第4章から第7章は調査研究での結果とその考察を行い、第8章で、介護職員の仕事での有能感を向上させるための提言を行っている。

 第4章以降は、特別養護老人ホームの介護職員を対象にした調査データをもとに多変量解析を駆使して分析したものであり、オリジナル性がきわめて高い。第4章では介護職員の仕事での有能感が「業務の達成」「能力の発揮・成長」「仕事上の予測・問題解決」の3因子でもって構成されることを明らかにした。第5章と第6章では、介護職員の仕事での有能感に関連すると考えられる人間関係と職場環境について分析した。人間関係についての分析では、「利用者との肯定的関係」が介護職員の仕事での有能感に最も強く関連していることを明らかにした。さらに、介護職員が仕事での有能感を感じながら働けるように支援するためには、利用者との良好な関係を築き、職場内のソーシャルサポートや協力的な人間関係の形成を促進することが有効であることを示した。職場環境についての分析では、職場環境の構造としては、「職場の全体的雰囲気」「仕事の明確性」「専門性の認知」「職場生活の柔軟性」「待遇の適切性」「教育研修体制」「雇用管理体制」で構成され、とりわけ「仕事の明確性」が介護職員の仕事での有能感に最も強く関連していることを明らかにした。第7章では、以上をまとめる分析として、介護職員の仕事での有能感とその有能感の主要因が専門職の内発的動機づけに及ぼす影響を明らかにしている。「利用者との関係と仕事の明確性が仕事での有能感を規定し、仕事での有能感が専門職の内発的動機づけを規定する」との因果関係モデルを共分散構造分析でもって実証した。第8章では、以上の知見をもとに、介護職員の仕事での有能感を向上させるための支援のあり方について、施設側と介護職員側に分けて提言を行っている。

 本論文は、介護職員の仕事での有能感の構造を示し、介護職員の仕事での有能感に関連する要因を明らかにし、最終的に、介護職員の仕事での有能感が専門職の内発的動機づけに及ぼす影響を明らかにするといった、きわめて論理的な展開で、研究をまとめている。さらに、分析結果から多くの知見を得て、有能感をもった介護人材の育成方法について様々な具体的提案を行い、今後の超高齢社会に対して大きな貢献ができる。

 以上のことから、本審査委員会は本学位申請論文が博士(学術)の学位に値するものと認めた。


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