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[生活科学研究科] 博士号取得者の紹介

■04 木村 直子(キムラ ナオコ)
・「子どものウェルビーイング」に関する実証的研究
―中学生を対象とした調査を用いて―
学位名: 学術 論文審査委員: 主査 教授 畠中 宗一
副査 教授 白澤 政和
副査 教授 山縣 文治
取得年月日: 平成18年9月29日

 
・論文審査の結果の要旨
 本論文の特徴は、以下の三点に要約することができる。すなわち、第一に、「子どものウェルビーイング」に関する広領域の先行研究のレヴューを行い、その比較検討を通して、独自の構成概念を設定し、その尺度化を試みたことである。第二に、その尺度を従属変数に設定し、親のライフスタイル、家族生活の充実、家族との情緒関係、施設職員との情緒関係、情緒的自立などを独立変数に設定して、複数の重要な仮説を検証したことである。とりわけ家族社会学や家族関係学の分野における情緒に関する研究が低迷するなかで、「子どものウェルビーイング」にとって家族の情緒関係の重要性を改めてデータで実証したことの意義は大きい。第三に、メイアーの対人関係の発達仮説を実証し、現実の家族政策を考えていく際のインパクトのあるデータを構築できたことであり、このことは高く評価される。

 本論文は、演繹法に依拠した仮説実証型の形式を取りながら、家族の情緒関係がキーであることや処遇年齢で「子どものウェルビーイング」を規定する要因が異なることなど獲得された知見のオリジナリティ及びその知見を臨床と政策の統合という文脈で行われた総合的な考察は示唆的である。すなわち、「子どものウェルビーイング」を家庭の中で実現するには、家族生活の各場面において、子どもたちがどのように期待し、考えているのかを把握する必要があること、そして子どもたちが期待し想定している家族生活と、親のライフスタイルを折り合わせることが求められていること。「子どものウェルビーイング」という視点で考えた場合、3歳以下の子どもを育てる者には、子どもの中に関係性を肯定的に内面化できるような関わりを行う責任が生じること。児童養護施設への入所が必要な子どもたちの処遇について、「家族」からの分離ではなく、「家族」という形式にこだわる必要があり、育ての「家族」、里親家族、家庭的養護の重要性とその可能性を考え直す必要があるということ、「家族」が「家族」として機能できるように「家族」全体を育てる支援が「子どものウェルビーイング」を実現する「家族」への支援であること、加えて政策主体の自立の捉え方の歴史的非一貫性や現行の政策への変更における科学的根拠の曖昧さなどの指摘は、今後の政策論争に刺激的なデータを提供していると思料される。

 以上のことから、審査委員会は、本論文が、博士(学術)の学位に値するものと認めた。


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